Topics お知らせ
CACL×LIXIL×永山祐子建築設計 3社共同プロジェクト 発表会&現地ツアーを実施
2025.09.10
CACL×LIXIL×永山祐子建築設計、能登の伝統的風景を未来へと継承していく共同プロジェクト
珠洲市長を招いたプロジェクト発表会&現地ツアーを実施

左から、羽賀豊・株式会社LIXIL 常務役員 デザイン&ブランド ジャパン部門 リーダー、永山祐子・有限会社永山祐子建築設計代表、泉谷満寿裕・石川県珠洲市長、奥山純一・株式会社CACL 代表取締役
株式会社CACL(以下CACL)、株式会社LIXIL(以下LIXIL)、有限会社永山祐子建築設計(以下永山祐子建築設計)の3社は2025年9月1日、令和6年能登半島地震で倒壊した家屋に使用されていた黒瓦を建材へアップサイクルし、新たに建築物へ使用するための共同プロジェクトの発表会を開催。泉谷満寿裕・石川県珠洲市長を招いて、珠洲市役所にてメディア向けの発表会および現地ツアーを実施いたしました。
プロジェクト概要
本プロジェクトは、能登半島地震で全壊・半壊した家屋に使用されていた「黒瓦」を廃棄するのではなく、「創造的復興」のシンボルとみなし、建材へアップサイクルすることで、能登の想いや記憶を未来へとつなぐ包括的な取り組みです。
現在、能登半島地震で全壊半壊した家屋は公費解体(※)により、解体業者によって分別され、地域集積場を経由し全国の処分場で廃棄されています。今回は、瓦に着目し石川県内の関係者をコーディネートするCACL、資源の循環利用を促進しながらさまざまな建材技術を持つLIXIL、この2社を繋げて企画発案を行い、デザインから建築への使われ方まで監修する永山祐子建築設計の3社が、それぞれの強みを活かし、公費解体された家屋に使用されていた「黒瓦」を新たな建材としてアップサイクルするための座組を確立しました。
—
(※)公費解体:令和6年能登半島地震で半壊以上の被害を受けた家屋(住家、空き家、納屋など)について、所有者の申請に基づき、市が所有者に代わって解体・撤去を行う制度。
プロジェクト発表会について
珠洲市役所で行われたプロジェクト発表には、泉谷満寿裕・石川県珠洲市長、奥山純一・株式会社CACL 代表取締役、永山祐子・有限会社永山祐子建築設計代表、羽賀豊・株式会社LIXIL 常務役員 デザイン&ブランド ジャパン部門 リーダーの4名が登壇。

奥山純一・株式会社CACL 代表取締役
まずはプロジェクトが生まれた背景にある思いについて、奥山純一・株式会社CACL 代表取締役が説明。陶磁器片に新たな価値を見出す活動と、復興支援を通じて珠洲で出会ったという黒瓦の破片について、「割れた断面から見えるオレンジ色と表面の黒色の対比が美しいと感じた」と話し、「被災された住民の方にお話を聞いたとき、『壊れた家を見ていると寂しい気持ちにもなるが、解体されてしまうとその記憶さえも思い出せなくなる』という話が印象的だった」と、黒瓦片をアップサイクルする取り組みを考えるに至ったきっかけについて話しました。

泉谷満寿裕・石川県珠洲市長
泉谷満寿裕・石川県珠洲市長は、「昨年元日の地震、津波、また9月の奥能登豪雨により、珠洲市は極めて甚大な被害を受けた。珠洲市では約5600世帯あった住宅のうち1770あまりが全壊、半壊を含めると全体の約7割にあたる3900もの家屋が被害を受けている。さらに、公費解体の申請数はおよそ2800。つまり、珠洲市の住宅の約半数が公費解体されることになった」と、珠洲市の現状について解説。
「珠洲市における黒瓦というのは、誇りであり宝。そんな黒瓦が使われた家屋が壊れていくのはいたたまれない気持ちだった。さらに、廃業が続き、黒瓦を作ることのできる会社がなくなってしまった現在、今回のような共同プロジェクトが珠洲市において展開され、生かされていくことはほんとうにありがたい。公費解体された家屋の黒瓦が生まれ変わって残ることには大変意義があり、ここからプロジェクトがおおきく広がっていくことを願っている」と思いを述べました。

羽賀豊・株式会社LIXIL 常務役員 デザイン&ブランド ジャパン部門 リーダー
羽賀豊・株式会社LIXIL 常務役員 デザイン&ブランド ジャパン部門 リーダーはまず、リサイクルアルミをの使用比率を高めた循環型低炭素アルミ「PremiAL(プレミアル)」シリーズや、これまで再資源化が困難とされ、焼却や埋め立てによって処理せざるを得なかった複合プラスチックをはじめとするほぼすべての種類の廃プラスチックと、廃木材を融合した「revia(レビア)」など、資源の循環利用促進に寄与する自社のマテリアルの実例を紹介。
「リサイクルというと、廃棄されるものをアップサイクルするという流れも重要だが、今回は現地の思いも含めて、地域に根差した黒瓦がもう一度価値を生むことができるというところにも可能性を感じる」と話し、LIXILの意匠材「textone」の技術を用いた今回のマテリアル開発の経緯をはじめ、素材そのもののオレンジ色を生かした優しい風合いや、取り入れる瓦片の大きさについてこだわったことなど、技術的な観点での特徴に言及しました。

永山祐子・有限会社永山祐子建築設計代表
発表会の最後は、マテリアルの意匠監修をはじめ、今後建築物などへの活用を計画する永山祐子・有限会社永山祐子建築設計代表。「2027年国際園芸博覧会」へのリユースが決定している2025年大阪・関西万博「Womenʼs Pavilion」、パナソニックグループパビリオン「ノモの国」などの実例をもとに、リユースのために協業する企業たちの思いを紹介しました。
さらには、ベネチアで奥山氏と出会い、石畳の舗装をともに歩きながら陶磁器片を建材に活かすアイデアを提案したことを振り返りながら、建築ならではの特徴として「建材を大量に使用することができるという価値があり、そこから生まれる雇用や技術、デザインという発展性も持ちあわせている」と説明。「現在、大規模商業施設での使用を検討しているが、決して独り占めするのではなく、さらにたくさんの方々を巻き込みながら、もっと面白いことが広がっていくことを願っている」と展望を語りました。

(左)珠洲市内にある黒瓦の一時保管場所 (右)鍛治建汰・有限会社セーフティ 専務取締役
その後、珠洲市役所を出て、珠洲市内を巡る形で、メディアツアーを実施。最初は珠洲市内にて公費解体された家屋から集められた黒瓦を一時保管している場所へ。解体・回収の委託を受けている鍛治建汰・有限会社セーフティ 専務取締役の説明を受けながら、珠洲市内から集められた大量の瓦片の山を見学しました。

(左)説明する谷内前吉昭さん (右)家屋を前に議論する登壇者3名
メディアツアーの最後は、倒壊による全壊認定を受け、自宅の公費解体を待つ珠洲市内の谷内前吉昭(やちまえよしあき)さんのご自宅を訪問。家屋の被災状況などを説明いただき、「石川県ではもう瓦を作っていないと聞いて、残念に思っていた。だからこそ、この話を聞いたときに、少しでも活用していただけるなら嬉しいと感じた」と、プロジェクトへの感想を聞かせていただきました。

能登の文化を象徴する黒瓦のある風景
マテリアルについて
黒瓦を破片に粉砕したものを、自然由来の素材を意匠として活用したLIXIL独自の意匠建材「textone」の原材料に使用し、能登瓦仕様として開発。この素材は、黒瓦の表面の黒くて強いイメージとは異なる、素材そのもののオレンジ色を生かした、とても柔らかくて優しい色味が特長。ある程度の粒感が残るtextone独自の技術だからこそ、能登の黒瓦の風景が目に見える形で生かすことができます。
※textone自体の詳細についてはこちらをご覧ください。


各社概要
株式会社CACL
九⾕焼がさかんな⽯川県能美市に拠点を置き、伝統工芸を継承する人手の不足と、障がいのある人の働く選択肢の狭さや低賃金という2つの課題を掛け合わせ、解決するための事業を展開。2024年の能登半島地震をきっかけに「Stand with NOTO」プロジェクトを立ち上げ、復興支援の一環として、輪島塗の職人の仮設工房の設置と仕事創出に取り組んだほか、九谷焼の陶磁器片に珠洲焼片や輪島塗の技術などを加えて、より進化したアートプロジェクト「 Rediscover project 」も始動。金沢21世紀美術館「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」に出展した。今年7月には、廃棄される可能性のある伝統工芸品や規格外のものの新しい価値を再定義すべく、陶磁器片などを用いたプロダクトやマテリアルの探求・制作をするための実験的なブランドとして「KAKERA」を立ち上げた。あわせて、ブランド初のコラボとなるLVMHフレグランスブランズ株式会社との取り組みを発表した。
有限会社永山祐子建築設計
https://www.yukonagayama.co.jp/
国内外から注目を集める建築家 永山祐子氏による建築設計事務所。主な実績:LOUIS VUITTON 京都大丸店、豊島横尾館、ドバイ国際博覧会日本館、JINS PARK、膜屋根のいえ、東急歌舞伎町タワーなど。JIA新人賞(2014)、World Architecture Festival 2022 Highly Commended(2022)、iF Design Award 2023 Winner(2023)など。現在、2025年大阪・関西万博にて、パナソニックグループパビリオン「ノモの国」と「ウーマンズパビリオン in collaboration with Cartier」(2025)、東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH」などが進行中。
株式会社LIXIL
https://www.lixil.com/jp/(グローバルサイト)
LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを展開。現在約53,000人の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開するLIXILは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えています。
本件に関する問い合わせ先
CACLコンタクトフォームよりご連絡ください。